今回は(株)明桃園に勤務する河西宏哉さんにお話をお伺いしました。
河西さんは県立農林高等学校造園緑地科を卒業後、造園会社へ就職しました。河西さんの身近には造園業界へ就業している方はいないそうです。ではなぜ造園業を選択したのでしょうか…
きっかけは中学2年生時の校外学習「甲斐路めぐり」※1。その事前学習で山梨にゆかりのある夢窓国師※2を調べるうちに、彼の作庭した京都・西芳寺の庭園の写真を見ました。約120種の苔が境内を覆い、緑のじゅうたんを敷きつめたような美しさより苔寺とも呼ばれる西芳寺の庭園の独特な姿に強い関心を持ったそう。そこから身近な「庭」にも興味を持ち始め、庭を作る「造園業」を仕事として考えるようになり、造園緑地科への進学を選び、職業とすることを決めたそうです。
きっかけとなった京都・西芳寺庭園
長坂中学校・造園業の魅力を伝える出前講座より) 中学生に造園の楽しさを語る河西さん
高校在学中には車両系小型建設機械(整地運搬積込)3t未満、造園技能士3級を取得。現在では明桃園にて日々造園業に取り組んでいます。
モットーはお客様が満足できるような庭つくりや庭の維持管理。「打ち合わせや段取りは社長が行いますが、現場では自分が会社の顔となる。お客様とも積極的に会話をし、ニーズに合った庭となるよう心掛けている」とのこと。与えられた時間でより良い技術を提供したいと、地道にハサミの使い方を修行中。美観性を維持しながら剪定をする「透かし」の技法をもっともっと向上させたいと話してくれました。
これからやってみたいことは?と尋ねると、「洗い出しをやってみたい」と即答でした。
洗い出しとは、日本庭園で見かける伝統的な造園技法で、コンクリートに色石を入れ、硬化する直前に水洗いし石を出す仕上げ技法です。現代の家屋でもアプローチや駐車場が趣のあるモダンな仕上がりとなります。また洗い出し手法は技術を要する為、熟練した技術が必要となります。
インタビューでは、明桃園社長・角野さんが隣でゆっくりとうなずいていました。入社2年目の河西さんがこれから「洗い出し」を教わり、技術を習得し、立派な職人となり、やがては次の若手へと伝える。そんな姿を見守りながら育てていくのでしょう。
今回の取材では穏やかに仕事への想いを語ってくれました、そして現場では黙々と作業をしながらも常にその現場での臨機応変に対応している河西さんを拝見しました。河西さんは人の手で造る「造園」という世界を楽しんでいるようで、庭の木々とともに成長していく造園家の未来が楽しみとなりました。
茶庭※3設計、施行したI様邸より)半年後のメンテナンス作業
「20年来の懸案であった茶室の庭の製作を明桃園さんに依頼しました。構想、設計、植栽の選択など、こちらの要望を確認しながら細部にわたって社長の角野さんが親切丁寧に対応してくれました。若手の河西さんをはじめ腕利きの職人さん達が社長さんの指示を受けて丁寧な仕事をしてくださり、引き締まった瀟洒(しょうしゃ)な小庭が無事完成しました。猛暑を乗り切った山茶花(さざんか)が少しずつ咲き始め、今は紅白の彩りを湛えて(たたえて)います。明桃園さんには感謝で一杯です。」
※1甲斐路めぐり
1泊2日で郷土やまなしを学習する中学校での校外学習授業。生徒自ら地域、テーマを決め、移動手段から食事の場所まで時間、費用など全て自分たちで調べて実施。時刻表の見方、時間やお金の使い方の社会勉強をし、また山梨の身近な歴史や文化に触れる良い機会となります。
※2夢窓国師(夢窓疎石)
鎌倉時代から室町時代に活躍した禅僧であり、「夢窓国師」の名で知られています。代表作で世界遺産にも選ばれている京都・天龍寺庭園、西芳寺庭園(苔庭)をはじめ、修行の場でもあった甲斐国(山梨県)でも宝寿院(市川三郷町)、覚林房(身延町)、恵林寺(甲州市・国指定名勝)などに作庭。
※3茶庭
茶事に呼ばれた客人が茶室へと向かう道すがらの庭のこと。実用美を重んじ自然の野山の趣を尊重します。自然を尊ぶ庭なので、剪定をする場合は、その木の役割を考えて透かしの濃淡を決め、どこに鋏を入れたのかわからないように手入れをします。
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